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この本は「ステルスMMT」であり、トロイの木馬だ
元S&Pグローバル副会長ポール・シェアードによる本書は、一言で言えば「ステルスMMT(現代貨幣理論)本」です。
著者はMMTの本拠地である研究所のアドバイザーを務める人物ですが、本書ではあえて「MMT」という言葉をほとんど使いません。これは、偏見を持たれやすいMMTのレッテルを隠し、主流派経済学の中にその本質を「トロイの木馬」のように忍び込ませる戦略的なアプローチのようにも見えます。
MMTの結論:「富裕層からの徴税は不要」
本書の最もスリリングな主張は、左派的なイメージの強いMMTの論理を徹底すると、逆に「富裕層は放っておけ(Don’t Tax the Rich)」という結論に達する点です。
なぜそうなるのか? その理由は「税の本当の目的」にあります。
- 税は財源ではない: 政府は通貨発行ができるため、支出のために富裕層から税金(お金)を集める必要はありません。
- 税の目的は「リソースの解放」: 税金の真の役割は、民間の購買力を奪い、政府支出のために実物資源を解放すること、そうして政府支出がインフレを起こさないようにすることです。
なぜ富裕層から奪っても意味がないのか
この論理を富裕層に当てはめると、課税の無意味さが見えてきます。
- 消費には限界がある: 資産が1000倍あっても、食料や生活必需品を1000倍消費するわけではありません。つまり、富裕層は彼らがもつ資産ほど実物資源を使っていません。
- リソースを奪い合わない: 富裕層が莫大な「デジタルの数字(お金)」を溜め込んでいるだけなら、一般庶民が必要とする実物資源(食料やガソリンなど)は奪われません。
つまり、彼らからお金を徴収しても、実体経済のインフレ抑制(リソース解放)効果はほとんどないのです。また現代の超富裕層の多くは起業を通じて新たな財やサービスを供給した結果として富裕層になっており、その意味では実物資源の提供者ですらあります。
本当に警戒すべきは富裕層の「お金」ではなく、その「使われ方」
ただし、何でもありではありません。以下の点には規制や警戒が必要でしょう。
- 不動産の買い占め: 土地や住宅など、供給が限られ庶民も必要とするものを富裕層が買い占めると、庶民の生活に悪影響が出ます。
- 産業の歪み: 儲かるからといって介護などの必需サービスより、富裕層向け豪華サービスへの労働力移動が過度に進むことは問題です。
- 政治的影響力: 金に物を言わせた政治への介入は著者も明示的に警戒しています。
まとめ
『パワー・オブ・マネー』は、ステルスMMT本として、MMTのイデオロギー色を排した考察を展開することで、Don’t Tax the Richといった興味深い結論を導き出しています。それ以外の点でも、MMT的な論点をそれなりにわかりやすく一通り解説しており、経済学にある程度親しんでいる方のMMT再入門にもおすすめです。
こちらの記事はAIを活用して以下の記事を要約したものです。より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
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