2024年衆院選から2025年参院選までの日本政治史

2024年衆院選から2025年参院選までの日本政治史

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この記事は2024年の衆院選後から2025年の参院選後までの日本政治の現代史を語ります。3分要約版の記事もあります。

2025年の参院選を戦後の政治史の中に位置付ける一連のシリーズの最終回で、議論は現代に追いつくことになります。

目次

2024年の衆院選後から2025年春までの政治過程

国民民主党の主役化、政界立ち回り、そしてつまづき

衆院選後の政界の主役は間違いなく国民民主党でした。衆院選での議席四倍増の躍進後はテレビでも大々的に報じられるようになり、看板政策となった「103万円の壁」という所得税の減税(所得控除額の引き上げ)政策が連日メディアを賑わせ、支持率は立憲民主党を抜いて野党第一党に躍り出ました。

このように急にスポットライトを浴びるようになった国民民主党は、玉木雄一郎の不倫報道、財源をめぐる論争もなんとか切り抜け、補正予算への賛成と引き換えに、103万円の壁の引き上げ、ガソリンの暫定税率の廃止などの合意に至りました。

財源をめぐる論争では自民党税調会長の宮澤洋一がラスボスとして叩かれ、財務省解体デモが盛り上がるなどの印象的な現象も生じましたが、その割に世間で財源論について議論が深まったという印象はありません。

衆院過半数を割った与党の自民党は老獪で、補正予算は国民民主党を引き込んで成立、本予算は維新を引き込んで成立(国民民主との約束は事実上反故)、年金改革は立憲を引き込んで成立とアクロバティックな政権運営を続けていきました。

こういうわけで国民民主党も衆院選の公約を十分に実現するには至らなかったのですが、103万円の壁などは部分的に引き上げられたことに加え、公約を実現できなかったのは自民党の約束破りのせいだとの批判が説得力を持ったこともあって、野党第一党の支持率を維持し続けました。減税政策を実現するために私たちにもっと力を与えてくださいと言い続ければ勝てるという状況だったのです。

風向きが変わったのは2025年の5月で、来たる7月の参院選の比例代表の候補として山尾しおり・須藤元気他の公認が発表され、国民民主が主戦場とするネット上で苛烈な批判を浴びたのです。

安倍批判の急先鋒の一人で、自身も公私様々な問題を抱える山尾の擁立は、先に整理した岩盤保守層・積極財政派・リハック的なもののうち、特に岩盤保守層を中心とする右派的なイデオロギーを重視する層の離反を招いたと思われます。この動きは5月末に右派層が嫌う選択的夫婦別姓法案を国民民主党が独自提出したことで加速されました。

山尾擁立は、本来は右派層も含めてネット世論に敏感なはずの玉木の痛恨の読み違えだと言えるでしょう。後者の法案に関しては、連合という一定の左派的な傾向を持つ支持母体との関係が背景にあると思われ、昨年来、ネットの右派層にも支えられている国民民主党の舵取りを非常に難しくしている問題の現れに他なりません。

他方の須藤元気の擁立は、以前の記事で「リハック的なもの」とまとめた中道的な現役世代の一部から批判された印象があります。この層は極端なものを嫌う傾向があり、須藤の反ワク的な言動や、いわゆる陰謀論的な言動に反感を持っていたと思われます。またこの層には医師などの医療従事者も多く、須藤の反ワクチン的傾向に苛烈な批判を展開しました。ただ、この層は後に須藤の反ワク総括動画が出たこともあるのでしょうが、結局は国民民主が一番マシ・まともということで国民支持者に留まった印象があります。

参政党への主役の交代

さて、この山尾ショックの影響が見えたのが6月です。山尾の擁立発表が5月14日で、公認取消が6月11日。その直後の6月15日に、兵庫県知事選の余波の文脈でも注目された尼崎市議選で参政党候補がトップ当選。同日の他の二つの地方選でも参政党がトップ当選を飾ったことが報道されました。2024年の衆院選以降、地方選でトップ当選を重ねてきたのは国民民主でしたが、ここで参政党にその座を譲り、主役が交代したのです。これはやはり岩盤保守層で国民民主から参政へのシフトが生じたと考えざるを得ません。

また、今回参院選の東京選挙区で2位当選した参政党の「さや」の擁立発表は5月19日でした。同氏にはネット上の積極財政派のなかでおそらく一番影響力のある三橋貴明がついており、この点で、そもそもの数は多くはないと思うが、積極財政派の参政党シフトも6月には起きていたのかもしれません。実際、私も三橋TVにはかなり勉強させてもらっていたので、参政党に投票してもいいかなと思ったのは、この「さや」の立候補によってでした。

「対決より解決」を掲げる国民民主党は主流派の言説と融和を図る傾向があり、2024年の衆院選直後もMMTを肯定的に紹介して炎上した鳩山紀一郎衆院議員のXのポストを一時期禁止するなど、そういったことも政治戦略としては仕方ない面があることは認めるものの、私のような理論重視というか原理主義というか、頭でっかちな傾向がある人間からすると、やや中途半端な印象を受けます。その点、安藤裕や三橋貴明のいる参政党の方がいいじゃないかと思ったわけです。

2025年参院選に至る政治過程と、参院選の結果の分析

参政党のホップ・ステップ・ジャンプ

さて、こうして国民民主の失敗でチャンスを掴んだ参政党は、尼崎市議選そのままの勢いで都議選でも3議席を得て躍進、メディアで取り上げられる機会が増えます。さらに維新で参院選の公認を得られなかった維新現職の梅村みずほの加入で国会議員が五人となり、参政党は参院選前の大事な時期に民放各局の党首討論番組への出演機会を得て、メジャーデビューを果たします。その後はバッシング的な報道も含めて、参院選の主役となり、最終的に1→14の13議席増の大躍進を遂げることになったわけです(議席増数では4→17の国民民主と同じ)。

この参政党の躍進の要因を整理すると以下のようになるでしょう。ずっと育ててきた支部の地道な活動が基盤にあります。そこに国民民主の失敗で自民党から流れてきた岩盤保守層(と一部には積極財政派)が合流します。それで尼崎市議選・都議選で勝利を収めて報道されます。さらに梅村加入で一気にメディア露出が増え、「日本人ファースト」のキャッチコピーで良くも悪くも政治論議の中心の位置を確保しました。尼崎市議選・都議選・参院選は、まさに参政党にとってホップ・ステップ・ジャンプだったのです。

現役世代の階層分析—リハック的なものと、そこから零れ落ちるもの

ここで私が「リハック的なもの」と呼んだものについて考えたいと思います。これには政治に関心を持ち始めた現役世代のうち、だいたい中間層より上の層が主に属するものと考えられます。この層は知的で実用的な生活者であり、制度の合理的な改革を求めています。この層はしっかり収入がありますが、所得税や社会保険料の負担が重く、子育てに苦労していたり、あるいは不安感があります。国民民主党が所得税の減税にこだわるのは、その支持層がこのようにしっかりと所得税を収めている層だからでしょう。

しかし、現役世代には中間層より下の層もいます。昭和の終わりには一億総中流と謳われた日本ですが、「失われた30年」と呼ばれる経済停滞、失業は少ないが非正規は多い労働市場、特に就職が難しかったロスジェネ世代といった悲劇の平成を経た令和の日本では、こういう人々が多くなってしまっているのです。こういう層からすれば、所得税減税はあまり恩恵がないでしょう。それはやはり高所得者ほど有利です。むしろ響くのは消費税減税です。

こういう中間層より下の現役世代に従来アプローチしてきたのは、れいわ新選組です。今回のれいわの議席数の停滞(1議席増)を考えると、既存の支持層まで参政党に奪われたということではないにせよ、主に訴求したい層の奪い合いで参政党に競り負けたということは少なくとも言えるでしょう。どちらもMMT的なものに影響を受けているれいわと参政の経済政策の基本的な方向性は同じであって、消費税は廃止の方向性だからです。

こういう風に整理できるかもしれません。2024年の衆院選以降の国民民主の人気を支えた岩盤保守層・積極財政派・リハック的なものの三つを考えると、岩盤保守層は参政に流れました。また岩盤保守層の高齢層はおそらく自民党から直接に日本保守党に流れる傾向もあったはずです。積極財政派は一部参政に流れました。そしてリハック的なもののうち、イデオロギー対立などを特に嫌う層は、山尾・須藤・夫婦別姓などで激しく批判された国民民主を離れ、イデオロギーよりテクノロジー、分断を煽らないことを標榜し、まだあまり批判される材料のない「チームみらい」に流れたのではないでしょうか。

そして、現役世代のうち、リハック的なものより余裕のない層が、今回はれいわ新選組ではなく、参政党に流れたのでしょう。国民民主は「手取りを増やす夏」という、どこか呑気なキャッチコピーを採用していたのに対して、自分たちが大事にされていないことを表現する「日本人ファースト」や、「これ以上、日本を壊すな!」という参政党のキャッチコピーには、より濃厚な危機感・切迫感が漂っています。

このことは、国民民主は20代から30代の若者層で相対的に支持が厚いのに対して、参政は40代から50代の壮年層で相対的に支持が厚いこととも符合します。若者は未来があり、その希望が気持ちの余裕を生むのに対して、壮年層だとそうもいきません。また壮年層はいわゆるロスジェネとして、厳しい状況に置かれている人がより多いと推定されます。

れいわの敗因と左派一般への逆風とオールド政党の落日

続いて、今回のれいわ新選組の停滞について、もう少し考えてみたいと思います。まず参政党との競り負けですが、都議選の明暗の影響が大きいでしょう。参政が3議席で、れいわが0議席。ここはどうも山本太郎があまり応援に入らなかったという話もあり、その戦略ミスが意外に大きな影響を生んだ可能性があります(私は都議選はれいわに投票しました)。

次に、左派的な視点からみれば、参政党が「日本人ファースト」を強調することで、暗に日本が「外国人ファースト」であるかのような虚偽の流布、あるいは少なくとも誇張を行って支持を集めたのは「ズル」だということになるかもしれません。確かにそういう面もあるが、好意的に解釈するのであれば、これは自分たちが政府に大切にされていないという人々の心情に訴えかけるメッセージでもあります。

これと対比して考えてみると、れいわの「れいわ、以外ある?」というキャッチフレーズの弱さが際立つのではないでしょうか。こんなに内向きな選挙向けのキャッチフレーズがあるでしょうか。「さっさと消費税廃止、もっと現金給付」も、もう支持している人向けだという印象が否めません。要するに、参政党は人々の不安や不満の心情に訴えかけたのに対し、れいわは内輪向けの発信をしていただけに見えるのです

最後に、先に触れたウクライナ戦争の余波ということも考えられるかもしれません。今回、立憲も伸ばせず、共産は壊滅、唯一の現役世代対応型の左派政党のれいわも停滞と、左派政党の衰退が著しいのです。今回も外国人問題などで遺憾なく発揮された、なんでも差別だといって現実的な問題への取り組みを妨げるようなポリコレ体質が嫌われているという面もあるのでしょうが、やはり日本の左派政党のアイデンティティたる九条護憲の説得力低下がボディーブローのように効いていると思われます。

ひょっとすると、伊勢崎賢治を特定枠で当選させた山本太郎は、このことを意識しているのかもしれません。戦地に赴き、武装解除の命懸けの交渉で平和を作ってきた伊勢崎に、山本はポスト・ウクライナ戦争の時代に平和憲法を生き延びさせる希望を見ているのかもしれません。

最後に、その他の既成政党(自民・立憲・公明・共産・社民)についていえば、昭和からの高齢化した支持層と特定の組織票以外は引き寄せられないまま、支持層の高齢化とともに徐々に衰退していると評価せざるを得ません。現役世代をターゲットにした政策と表現方法を持つ新興政党の登場により、固定客以外の現役世代の支持層はこれらの政党から引き剥がされてしまいました。

積極財政が分からなければ、現代の政治も経済もわからない

今回も選挙分析の最後も藤井聡のポストで締めたいと思います。現役世代がネットで知識を得て選挙に行く時代には、もはや積極財政がますます支持され、緊縮財政がますます支持されなくなるという傾向は今後も続くように思われます。このことは私にとっては当然です。生産性向上により総需要不足(供給過剰)が常態化していく現代の先進国において、緊縮財政は端的に論外だからです。積極財政(財政赤字)が原則なのです。

このことをマスメディアや、そこに登場する識者たち、またリハックやピボットといったネット内マスメディアもまだ分かっていないようです。これが分からない限りで、彼らの政治経済分析は的外れであり続けるでしょう。

今後の日本政治の展望―多党制に向かうのか?(2025年7月末時点の分析)

自民党総裁選の行方—緊縮リベラル・改革ネオリベラル・保守積極財政

今後の日本政治はどう展開するでしょうか。衆参両院で過半数を失い、都議選を含めれば、三連続で大敗した石破茂は、早晩退陣を迫られるでしょう。

しかるに、自民党が比較第一党であり、野党に政権を担う気概や準備はなく、また野党間の連携の可能性も限りなく低いのです。そうすると、結局、自民党が中心となって、連立や連合の枠組みの拡大をしていくしかないでしょう。

この動向を左右するのが次の自民党総裁です。方向性は三つでしょう。林芳正や加藤勝信らの現在の主流の緊縮リベラル派、小泉進次郎などのネオリベラル改革派、高市早苗や小林鷹之などの保守積極財政派。主流派なら立憲と距離が近い。改革派は維新と相性が良い。保守派は国民民主と相性が良いでしょう(参政は衆議院の議席が足らない)。

主流派が立憲と大連立して消費税増税に向かうのは、積極財政派からすれば悪夢のシナリオです。確かにそうですが、この大連立が実現したとして、今の流れであれば次の選挙で自民と立憲、双方の緊縮財政派に壊滅的な打撃を与えることができるのではないでしょうか。緊縮派を一掃する機会が得られるのです。そういう意味では、これも究極的には悪くはないでしょう。

ただ、今の石破政権の選挙の弱さを見たとき、自民党議員が現在の主流派の継続を望むとはそもそも考えにくいでしょう。それはあまりに愚かすぎます。やはり(ネオ)リベラル改革派か保守派かへの党内政権交代が望まれるのではないでしょうか。

小泉進次郎はどうでしょうか。前回の総裁選では、討論で相対的に安定感を欠いたことに加え、選択的夫婦別姓・ライドシェア解禁・解雇規制緩和の(ネオ)リベラル政策が保守的な党員の支持を得られず失速しました。現在の主流派である石破も相対的にリベラルですが、小泉は規制改革などに積極的でネオリベラルでもある点に違いがあります。今回の令和の米騒動では備蓄米放出による米の値下げで都市住民の支持を得たが、当然、農村では不人気です。

要するに小泉の特徴は、自民党支持層には人気がないものの、その外での人気の広がりは獲得できそうだという点にあります。こう考えると、前回と同様、党員投票があれば第一回投票で敗北する可能性が高いようにも思われます。逆に国会議員のみであれば、当選の可能性もあるでしょう。

相性がよい連立相手は規制改革志向の強い維新でしょう。ただ、維新が落ち目であることに加え、同じことですが、新自由主義的な構造改革(規制緩和・身を切る改革)論は、それこそ父・小泉純一郎の時代から20年経って、明らかに以前ほど支持されなくなっています。私はこちらの記事で論じた通り、必ずしも構造改革を否定しませんが、一般には反・新自由主義的な傾向を持つことが多い積極財政派が力を増している中で、それほど支持を拡大できるのかは疑問です。つまり、先行きの見通しは明るくありません。

結局、自民党議員の立場に立って、自民党政権を安定させるという目的からすれば、連立相手は勢いのある国民民主がよく、そうすると保守派・積極財政派の高市・小林あたりが良いということになるのではないでしょうか。小林はまだ若いということで、結局、高市が本命となりそうです。逆に二人が割れると、自民党にとっていい結果にならないはずです。

私も右派イデオロギーに抵抗がない積極財政派として、高市や小林の登板を相対的に望ましく思います。もちろん、彼らが十分に積極財政かというと、そこには疑問を持っています。また、どちらも核融合やら何やらの最新の技術開発で日本を再び世界のトップにするといった志向を持っていることには、ここまで足腰が弱っている日本では、食料やエネルギーなど生活に密着したもっと基本的なところを整えるのが先だと思うといった方向性の違いもあります。

多党制の望ましさと左派の世代交代への期待

ここ二年の政治状況は、大きく見ると自民党の保守派(安倍派)が崩壊することで、比較的保守的な若い政党である国民民主と参政が政界の主役に躍り出るチャンスを得たことだと捉えることができます。左派の方でも、類似の世代交代が起きなければ、今後、ますます左派は衰退してしまうでしょう。

この二年の自民党一強の崩壊により、ネオ55年体制は多党制の時代に移り、英米型の二大政党制ではなく、多党間の連立の組み替えで政治が動いていくヨーロッパ型の政治が次の日本政治のモデルになるとの観測が強まっています。

確かに、二大政党制によってガラッと変わる政権交代より、多党制のもとでの連立組み替えの方が、政権運営経験を継承でき、また政権の連続性を確保しやすいという点で、変化を可能にしつつ相対的に安定的であって、日本の政治風土にとって望ましいでしょう。二大政党制を志向する小選挙区制から、多党制を前提とする中選挙区制等々への制度変更も議題となるでしょう。

その多党制の時代に左派が意味のある地位を占めるためにも、自民党左派や立憲のような(アベ逆張り)緊縮リベラルから、れいわのような積極リベラルへの世代交代が望まれるところです。

本サイトの「21世紀の政治経済学」が主張するところによれば、積極財政こそが、私たちが現在知るような文明の存続を可能にする唯一の道だからです。これ以上、「豊かさゆえの貧困」のなかに人々を放置し続ければ、現代の民主主義国家はやがて権威主義体制や分断国家へと自壊していくでしょう。最悪の場合、国家は(本当は自分が生み出せる)需要を確保するために保護主義やブロック経済に回帰し、対外的な敵意の煽動の果てに、再び戦争へと突入していくことすらあるかもしれないのです。

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