現代の国際関係・国際秩序の変化について考察する

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最近、戦後80年にして「80年続いた戦後の国際秩序」が崩壊しつつあるとよく言われます。

しかし、この言い方は、国際秩序の基本原理が全く異なる冷戦期とポスト冷戦期の違いを無視した、あまりに雑な物言いとも思われます。

この雑さから分かるのは、要するに、こう言われるときに問題になっているのは、実は80年の中で大きく変化してきた「戦後の国際秩序」そのものではなく、冷戦期とポスト冷戦期を通じて変化しなかった何かだということです。

それが何かといえば、もちろん、日米安全保障体制であり、アメリカが日本を守ってくれるという確信に他なりません。さらに言えば、それは日米安保に裏付けられて可能になってきた面がある憲法九条平和主義体制でもあります。

これらが第二次トランプ政権の登場によって脅かされている。その不安の表現が日本で言われる「80年続いた戦後の国際秩序の崩壊」という言い方なのです。

このことを踏まえて、戦後の国際秩序、冷戦終結後の国際秩序について「戦争」を中心に考えてみましょう。

目次

冷戦期の国際秩序について

冷戦期の国際秩序を特徴づけているのはいうまでもなく冷戦であり、米ソの代理戦争です。核兵器を所有した米ソは、そのいわゆる「相互確証破壊(Mutual Assured Destruction、略してMAD)」、もう少し日本語でわかりやすく言えば、「もし戦ったら核ミサイルの撃ち合いでお互い絶対に絶滅するよねという確信」を共有することによって、直接対決を回避しました。

ただ、それは対立の不在を意味しません。直接対決を避ける代わりに米ソは両者の勢力圏の触れ合う各所で代理戦争を展開しました。朝鮮半島、キューバ、ベトナム、アフガニスタン。ベトナムとアフガニスタンから分かるのは、ここでは直接に参戦する方が負けだということです。ベトナムではアメリカが、アフガニスタンではソ連が相当の痛手を被り、広い意味での国力を疲弊させました。逆に言えば、相手に戦争を起こさせ、自分は相手の敵対者のバックアップに徹するというのが最も賢いやり方なのです。

ポスト冷戦期の国際秩序について

ポスト冷戦期の国際秩序の特徴は、要するにアメリカの一強支配であり、戦争といえば、途上国での内戦か、アメリカ(を中心とする欧米先進国)とテロ組織や小国などとの非対称戦争です。そこでは米ソ冷戦のような対等な者同士の対立は鳴りを潜めました。

この時代の戦争としてやはり特徴的なのは中東でのそれでしょう。イラクのクウェート侵攻から始まった湾岸戦争、9・11テロから始まったイラク戦争とアフガン戦争、アメリカは戦争自体には勝利したものの、その後、この地域に安定をもたらすことはできず、いたずらに体力を消耗しました。その象徴的な場面が、2021年のアフガン撤退、その直後のタリバンによるアフガンの政権奪還に他なりません。

おそらくはこの失態の余波のなかで、アメリカがウクライナへの軍事非介入を性急に宣言してしまったことが、ウクライナ戦争の原因の一つとなっています。

ポスト-ポスト冷戦期の国際秩序について

ポスト冷戦期はアメリカ一強支配であり、世界のアメリカ化という意味を濃厚に帯びたグローバリゼーションの時代だと言いうるでしょう。このシステムの内部崩壊が2010年代から徐々に始まっていったということが言いうるはずです。

アメリカ一強ということをロシアとの関係で捉えてみましょう。ロシアとしては米ソ冷戦は対等に終わり、これからは米ロで協調していくというビジョンを描いていたでしょう。しかし、アメリカは唯一の超大国を自認してロシアを格下の敗者として扱い、それでいてNATOの継続と拡大などロシアへの敵対視は辞めませんでした。

これに対してロシアとそのプーチン政権が反発を強めていき、それが2010年代半ばのクリミア占領、そして2022年からのウクライナ戦争へと繋がっていきます。

またグローバリゼーションは中国の強大化を促進しました。2000年前後に中国がWTOに加盟すると、中国は急速に世界の工場として台頭し、アメリカに並ぶ経済力を獲得しました。2020年代には、アメリカと中国の二大強国によるG2体制が語られるほどになっています。この両者の対立、いわゆる新冷戦が現代の国際秩序の焦点となっています。

さらにグローバリゼーションは先進国経済をある意味で疲弊させたということが重要です。グローバリゼーションによって、製造業は途上国に移って途上国との賃金競争が生じましたし、またサービス産業等でも移民との賃金競争が生じました。これが先進国の中間層を分解させ、上層と下層への分極化を促しています。

主にこの下層を基盤としていわゆるポピュリズムの運動が生まれ、それらは反グローバリズム・反グローバリゼーションを主張します。この中間層の経済的疲弊と戦争の経済的負担が結びつけられることで、アメリカが世界の警察の役割をおりて、いわばアメリカ第一主義、孤立主義的な傾向を強めることにもなっています。

現在の国際秩序とその中での日本を考察する

現在は、冷戦後の国際秩序の転換期です。

アメリカ一強支配のグローバリゼーションの時代、アメリカの傲慢かつ攻撃的な態度が冷戦の負け組ロシアの暴発を生み出し、またグローバリゼーションそのものが、その勝ち組たる中国の脅威を生み出し、また度重なる対外戦争と経済のグローバリゼーションがアメリカ自体をある意味で疲弊させて、その内向き傾向を生み出しています。この意味で、アメリカ一強のグローバリゼーションはその内的な力学からして自らを転換させる動向を生み出しているわけです。

ここから日本のことに焦点を移していきましょう。日本では、冷戦後の国際秩序の転換ではなく、大げさにも戦後80年続いた国際秩序の転換が語られます。先ほど指摘した通り、この雑な言い方の背景には、焦点になっているのが、その実、冷戦期とその後を通じて変わらなかった「日米安全保障体制」、つまりアメリカが日本を守ってくれるという確信の揺らぎであるという事実があると言えるでしょう。

では、日本はどう危険なのでしょうか?ロシア・中国・北朝鮮という敵対的な核武装国家が三つもあることが問題だと言われるでしょう。

ただ、私はロシアはそれほど問題にはならないと感じています。先に冷戦期について、代理戦争では相手を戦争に直接参戦させ、自分は後方支援に徹するのが最も賢いと指摘しましたが、ウクライナ戦争におけるロシアは明らかにこの罠にハマっています。

体制が崩壊しはしないにせよ、ロシアの国力は明らかに減衰しており、それはシリアやイランなどいくらかロシアの衛星的な側面のある国家の体制が崩壊したり、崩壊寸前だったりすることから明らかです。ロシアはそれらを支える余力を失っています。ロシアは深刻な脅威にはなり得ないでしょう。

続いて、北朝鮮もそれほど大きな問題ではないと思います。やはり国力が弱いですし、また北朝鮮のターゲットはなんといってもまずは隣接する韓国でしょう。体制が崩壊しそうになった際のやけっぱちの暴走による核攻撃を警戒すれば足りると思います。

最後に中国ですが、やはり中国が最大の脅威であることは否定できないでしょう。しかし、中国による日本への全面侵攻などは考えづらいかと思います。むしろ、アメリカの影響力が引いていった時に、中国の軍事的な脅迫によって日本が実質的に属国化され、さまざまな不利な条件を突きつけられるということが現実的な脅威だと思われます。

私は第三次世界大戦はさほど心配するべきではないと考えています。というのも、大国間での核による相互確証破壊が残っている以上、冷戦の世界大戦化を防いできた仕組みは残っているからです。さらに昨今の大国間の対立も第二次世界大戦のときのような社会主義などの普遍主義的なイデオロギー(世界観)の絡んだものではなくなっています。

普遍主義的なイデオロギーであればこそ、戦争が全面化されるわけであって、そうではなく棲み分けを志向するような反グローバリズム的ないわばローカル・イデオロギーが優位する現代においては、わざわざ世界大戦を起こすイデオロギー的な理由がないのです。

もし今後世界大戦が起こるとすれば、それはいわゆるプラネタリーバウンダリーの問題でしょう。すなわち、地球の環境制約によって世界人口を十分に養うことができなくなり、食料その他の資源をめぐって世界的な奪い合いが起きるなら、世界大戦につながるかもしれません。そうして、世界人口が環境限界に適合的なところまで調整されることになるのでしょう。あるいは戦争による破壊によって直接、あるいは環境汚染やシステムの崩壊によって間接的に、人類は絶滅することになるかもしれません。

こう考えると、環境問題に関しては十分な配慮が必要ですし、先進国で問題化されている少子化と人口減少は実は人類全体にとっては良いことだということも分かってきます。

さて、話を日本に戻しましょう。日本の問題は中国への属国化をどう防ぐかです。アメリカに守ってもらえばよかったのがこれまででしたが、いま日本が直面しているのは、内向き化するアメリカが守ってくれるのか、そして守ってくれるかもしれないにしても、自国第一で自国の利益を優先するアメリカの属国であることが中国の属国であることより果たしてマシなのかという問題です。

このように図式化してみると、日本は差し当たりはアメリカについているわけですから、アメリカが引いていくのに合わせて徐々に自立化していき、最終的には完全な自主独立を目指していくというのが基本線であることは明らかだと思います。

そして、私の願望を言わせてもらえば、そもそもアメリカをはじめとする先進国を正常化することが最も重要です。そうすれば、アメリカは世界の警察を降りずに済みますし、ある種の被害者意識からアメリカ第一主義にひた走る必要もなくなります。

そして、結局、そのような先進国の経済・社会・政治の正常化が可能だとすれば、それは私の「21世紀の政治経済学」の諸主張が受け入れられることによってだと私は思っています。

アメリカ第一主義を掲げるトランプは関税による保護貿易主義で世界を混乱させていますが、関税のような需要確保政策(国内の供給者のために国内の需要を確保してあげる政策)ほど不合理な政策は滅多にありません。

需要なんて政府がお金を配るだけで作り出せますし、そもそも需要不足(=供給過剰)なのであれば、お金を配って需要を増やすとともに(お金があるならその分は働かなくて済むという形で)供給を減らして需給のバランスを取るのがもっとも合理的です。

本当の問題があるとすれば、それは上でも指摘したようにプラネタリーバウンダリーのような環境的な供給制約であり、人口増大の抑止と省エネ・リサイクル・排出物対策などの各種技術発展によって、この問題をコントロールしつつ、需要制約のような非本質的問題が本当の国際問題に発展しないようにすることが重要なのです。

私は需要制約のような非本質的問題をさっさと解消し、先進国の政治を安定させ、それが他国に対する一種の被害者意識や攻撃性によって支配されることを終わらせることで、プラネタリーバウンダリーのような本当の問題に対して国際的な協調を可能にすることが重要だと考えます。

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